英主要7行がポンド建て「トークン化預金決済」を初実装!ブロックチェーンによる金融の未来が現実へ
英主要7行がポンド建て「トークン化預金決済」を初実装
英国の金融業界において、ブロックチェーンを活用した革新的な実証実験が大きなマイルストーンを達成した。
Barclays(バークレイズ)、HSBC UK(The Hongkong and Shanghai Banking Corporation)、Lloyds Banking Group(ロイズ・バンキング・グループ)をはじめとする英国内の主要7銀行が参加するGreat British Tokenised Deposit initiative(英国トークン化預金イニシアチブ」の下、トークン化された英ポンド預金を用いた実際の顧客間取引が完了した。これにより、これまでの伝統的な金融インフラのあり方を根底から変える可能性を秘めた、新しい決済の形が現実のものとなっている。
業界をリードする主要銀行とプロジェクトの概要
今回の画期的な取り組みには、上記の3銀行のほか、Monzo(モンゾー)、Nationwide(ネーションワイド)、NatWest(ナットウエスト)、Santander(サンタンデール)といった名だたる金融機関が参画しており、基盤となる共通プラットフォームの開発はQuant(クアント)が担当している。
ロイター通信の報道によると、銀行間で資金を移動させるためにトークン化預金が活用された取引は今回が初めてであり、業界団体であるUK Finance (UKファイナンス)がその詳細を公開。2025年にスタートしたパイロットプログラムを通じて進められてきたこのプロジェクトは、単なる机上の理論から、実際の経済活動を伴う実証フェーズへと移行した。
今回の実証実験では、主に2つのユースケースがテストされた。1つ目は住宅ローンの借り換え(リモーゲージ)完了に関する2件の取引だ。不動産の取引完了と同時に、それまでロックされていた資金が自動的に解放される仕組みが採用された。
2つ目は消費者向けオンラインマーケットプレイスを想定した決済テストで、買い手の口座内で資金を一時的に安全に確保(ロック)し、商品やサービスの受領が確認された段階で自動的に売り手へ送金されるプログラマブル預金(プログラム可能な預金)の機能が実証された。
浮上するステーブルコイン不要論とその法的・構造的背景
この成功により、金融市場では、銀行にそもそも独自のステーブルコインは必要なのかという深遠な議論が活発化している。
銀行が既存の預金システムをそのまま維持しながら、ブロックチェーン技術によってプログラム可能な機能や迅速な決済性を付与できるのであれば、個別のデジタル・トークンを発行する必要性が薄れるのではないかという見方だ。
ここで重要となるのが、トークン化預金とステーブルコインの本質的な違いだ。
法的地位と構造:
トークン化預金は、あくまで通常の銀行口座に保有されている預金と同じ法的地位を持ち、商業銀行による債務(顧客に支払うべき資金)をデジタルで表現したものだ。一方、民間企業などが発行する一般的なステーブルコインは、別個の発行体に対する請求権であり、準備資産によって裏付けられている。
資金の流出入:
ステーブルコインの利用は銀行システムから外部へと資金を流出させる側面があるが、トークン化預金であれば顧客の資金を銀行システム内にしっかりと留めておくことができる。
この仕組みにより、イングランド銀行(英国の中央銀行)をはじめとする規制当局や銀行側は、通貨主権や信用コストへの懸念をクリアしつつ、より低コストで効率的な資産移動を実現できるとして、トークン化預金を推奨する姿勢を示している。
ステーブルコインの優位性と台帳分断の課題
もちろん、すべての面でトークン化預金が完全に優位というわけではない。ステーブルコインには、パブリック・ブロックチェーン・ネットワーク上や異なる金融機関を利用するユーザー間でのポータビリティ(持ち運びやすさ)という大きな強みがあり、この高い利便性が、これまで国際的な取引や財務管理分野での普及を後押ししてきた。
これに対し、トークン化預金は銀行間での共通インフラや、相互運用性に関する基準への合意が不可欠となる。これまでの10年余り、各金融機関が独自にブロックチェーンシステムを構築した結果、台帳が分断され、機関同士で円滑な取引ができないという大きな障壁が存在していた。
今回の英主要7行による取り組みは、まさにその共通基盤や相互運用性のテストをクリアし、デジタル資産の決済に不可欠なデジタル・キャッシュのあり方を示した点に大きな意義がある。
本格運用に向けた今後の展望と国際的な広がり
実証実験の成功を受け、このプロジェクトは今後の本格運用に向けた次のステップへと舵(かじ)を切っている。
今後は運営会社の設立に加え、明確なルールブックやガバナンス体制の策定が進められる予定のほか、参加銀行は2027年第1四半期に、トークン化預金を用いて取引および決済が行われる3本のデジタル債券を発行する計画だ。
このイギリスの先進的な試みは、すでに海外の金融市場からも熱い視線が注がれている。過去12カ月間には他地域の関係者からの問い合わせが相次いでおり、欧州の関連機関との協議も行われている。また、大西洋を挟んだ米国でも、銀行業界団体兼決済事業者であるThe Clearing House(ザ・クリアリング・ハウス)が同様の銀行間トークン化預金プロジェクトを発表するなど、グローバルな規模で金融のデジタル化が加速している。
英国の主要7銀行による今回の挑戦は、ブロックチェーン技術が単なる実験の域を脱し、世界の金融システムを根本から刷新する“現実の未来”として動き出したことを明確に示している。
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