ASIC、ストレージおよび光モジュールなどのコンポーネントの「テールリスク」:米国の電力不足、ラックに装着しても電力が通らない
モルガン・スタンレーは、米国のデータセンターが2028年までに約32GW、つまり34%の純電力不足に直面すると予測しています。電力供給のボトルネックは、まずASICやストレージ、オプティカルモジュール、電源管理などサプライチェーンの末端を直撃する可能性があり、NVIDIAやBroadcomは相対的により強靭であるとされています。自家発電や海外展開が加速したとしても、このギャップを短期間で解消するのは依然として難しいとみられています。
米国のAIインフラのボトルネックは、「チップ不足」から「電力不足」へと移行しており、電力不足がまず脅かすのはNvidiaではなく、ASIC、ストレージ、光モジュール、および電源管理などサプライチェーンの末端部分かもしれません。
Morgan Stanleyの最新レポートによると、米国のデータセンターは2026年から2028年にかけて約34%の純電力不足、すなわち32GWのギャップに直面すると予測されています。レポートでは、NvidiaおよびBroadcomの2027年業績予測には現時点で実質的な影響はないものの、電力不足が原因でチップが計画通りに導入できず、それにより下流部品の注文遅れ、キャンセル、在庫調整などのリスクが生じる可能性があるとしています。
コアの違いは、Nvidia GPUの単位電力あたりのパフォーマンス(トークン生成量)が高く、主要チップメーカーが最終的な導入先を高い可視性で把握できている点です。一方、ASICは電力リソースにより敏感で、ストレージ、光学部品、電源管理製品などは顧客の在庫積み増しやプロジェクトの遅延に影響を受けやすい傾向があります。
ウォールストリートジャーナル日本語版の以前の記事によると、Oracleのウィスコンシン州1.3GW規模「Project Lighthouse」がこのリスクの現実的な反映です。送電承認の再開後も、プロジェクトの全出力供給は最速でも2028年10月に遅延する可能性があり、悲観的には2029年春まで延期される場合もあります。AIサーバーはラックに設置されていても、電力がなければ実際の処理能力や収益にはつながりません。

NvidiaとBroadcom:需要の可視性が高い、ASICはより強いプレッシャー
Morgan Stanleyは、NvidiaとBroadcomの経営陣はすでにLand, Power, Space(LPS)の制約をガイダンスに織り込んでおり、両社とも最終的なチップ導入先の可視性が高く、グローバル展開により米国単一市場への依存も低減していると見ています。
製品効率も同様に重要です。Nvidia GPUは1ギガワットあたりより多くのトークンを生成でき、電力が限られている場合に導入の優位性があります。一方、ASICの単位電力あたりの出力は低く、より多くのLPSリソースを争奪する必要があり、電力ボトルネックの影響を受けやすいとされています。
NvidiaのCEO ジェンセン・ファン および Broadcom CEO Hock Tan も最近、電力リソースがAIインフラ導入においてチップやストレージよりも調整が難しい制約要因になっていると強調しています。
ストレージ・光モジュール・電源管理:注文リスクはサプライチェーン末端に集中
レポートは、ストレージ、光学部品、電源管理、アナログチップはプロジェクト遅延の影響を受けやすいと指摘します。 これらカテゴリは以前はAIインフラの拡大や需給緊張によって恩恵を受けてきましたが、エンドプロジェクトが遅れれば顧客はまず在庫整理を進め、続いて後続の注文削減に動く可能性があります。
ASICも同様に導入効率の問題に直面しています。電力が逼迫している場合、顧客は単位電力あたりの演算能力生成を重視するため、低効率のASICプロジェクトはより遅延しやすいです。
Broadcomのガイダンス変更からも、市場の期待値が収束してきていることが見てとれます。2023年3月の時点で同社は2027会計年度AI収益が1,000億ドルを大きく超えると見込んでいましたが、9月の最新ガイダンスでは1,150億ドルにとどまっています。規模は依然として大きいものの、さらなる上方修正余地が限定されてきました。
自家発電と海外展開:電力ギャップはなお埋めがたい
レポートでは、2026~2028年にかけてピーク時間外のガスタービンとエンジンの新規容量の基準シナリオは約19GW、Bloom Energyの燃料電池は約6GWの寄与を見込んでいます。原子力や仮想通貨マイニング施設の再活用も補完的にはなりますが、全体としてはギャップ解消には不十分としています。
海外展開もプレッシャーを部分的にしか緩和できません。Morgan Stanleyは米国の世界の演算能力シェア予測を60%から55%に引き下げましたが、欧州での承認プロセスの遅さや中東の地政学的リスクなどが需要シフトの制約となっています。
同時に、米国は熟練労働者の不足や地方の反発にも直面しています。CSISは2030年までに米国で14万人超の熟練工が新たに必要となり、既存の労働力では年間10〜20GWの天然ガス発電所しか新規設置できないと見積もっています。
AI業界にとって、チップが生産できるか否かはもはや唯一の制約ではありません。十分な電力を確保し、実際に稼働まで持っていけるかが、今や注文履行速度とサプライチェーンの収益性を決定する次のハードルとなっています。
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